個人というのは、現実には、人間集団、社会−経済的集合、情報機械など全てを巻き込んだ過程の終着駅に位置するものである。 (『三つのエコロジー』)

 作家とは、歴史や社会などを超越した存在なのでしょうか。彼らの自我は、それほどまでに完成されていると言えるのでしょうか。いいえ、作者とは必ずしも絶対的な者ではなく、特権的な存在でもありません。その紡ぎだす作品は矛盾の色に包まれ、脆弱な構造に支えられているのです。
 私たち読者は<物語>を自分の経験のうちに捉え直さなければいけません。その時にこそ、<物語>は時代の変化に抗うことなく、無限の生を得ることができるのです。

 ■項目
物語の時代 → バルト的転回への道程
視点の移動、主体の喪失
退廃的時代の文学
戯作文学の変遷と享保の改革
都市空間の中の文学へ


(C)1999 ユズハ ( mailto:Yuzuha@bigfoot.com )